[お役立ち情報]
2024年11月25日
世界の気候変動・温暖化問題と、私たちにできる小さな対策
つい先日まで国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が開かれていたことをご存じでしょうか?
この会議は、世界約200の国・地域の首脳らが地球温暖化対策を話し合うもので、29回目となる今年は11月11〜22日の予定でアゼルバイジャンの首都バクーで開かれました。
そもそも、気候変動って?
2024年の日本の夏が記録的な暑さに見舞われたことはまだ記憶に新しい人も多いでしょう。気象庁によると、6月〜8月の平均気温は基準値と比べ+1.76度で、統計を開始した1898年以降の夏として、2023年の記録と並び最も高くなりました。特に顕著だったのは猛暑日の多さで、観測された猛暑日ののべ地点数は、10,273と昨年を大幅に上回る過去最多でした。
この異常な気候変動は日本だけではありません。サウジアラビアでは6月、最高気温が50度を超え、イスラム教の聖地メッカへの大巡礼に参加した約1200人が熱中症などで死亡したほか、9〜10月には大型ハリケーンがアメリカ南部を次々と襲い、大きな爪痕を残すなど、世界各地で深刻な被害をもたらしています。そしてこれら地球規模の異常気象は、温室効果ガスの増加による地球温暖化が原因といわれています。
このまま気候変動が続き世界の気温が上がり続けると、野菜や米などの作物の育成に問題が生じ、海面水位上昇による台風の発生、水不足が深刻な地域における干ばつの増加、森林火災の増加、海や陸の生態系への影響、健康被害、食糧不足や貧困問題など、世界中でさまざまな問題が深刻化する恐れがあります。
COPでは何が話し合われているのか
国連気候変動枠組条約は、1992年5月に採択され、1994年3月に発効した条約で、二酸化炭素(CO2)をはじめとした大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目的としています。この目的のためにCOPで話し合われる議題は「地球温暖化・気候変動をくい止めるための温室効果ガスの削減目標は適切か」「そのために各国はどのような努力をしているか」ということです。
2015年のCOP21で採択された「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べて「2℃を十分に下回り、1.5℃に抑える努力をする」との目標が掲げられました。1.5℃に抑えると、2℃上昇する場合と比べて極端な豪雨や熱波が少なくなり、2100年までの海面上昇は約10cm低くなると言われています。
気温上昇を1.5℃に抑えることは可能か
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、地球温暖化が現在の程度で続けば、2030年から2052年の間に1.5度に達する可能性が高いとされており、気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減することが必要だと示されました。
そのため、ここ数年のCOPではこの「1.5℃目標」が達成できるのかが議論の中心となっています。しかし、国連環境計画(UNEP)の発表によると、2023年の世界の温室効果ガス排出量は前年比1.3%増の571億トンで、減少どころか、過去最多の排出量だったことが示されました。そしてこのままでは世界の平均気温は2030年までに2.6〜2.8℃上昇し、2050年には最大3.1℃と、「1.5℃」目標の倍以上の上昇になる、という厳しい現実が突き付けられました。
「1.5℃目標」に対する日本の温室効果ガス排出量
UNEPは、こうした厳しい現実を踏まえながらも「1.5℃の目標を達成することは依然として技術的には可能」としています。そのため、各国はより野心的な新しい削減目標を2025年2月までに国連に提出しなければなりません。
2020年に日本は、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。これは、温室効果ガスの「排出量」から、植林や先端技術によって増やすことができる「吸収量」を差し引き、合計を実質的にゼロにすることです。
しかし、今回のUNEPのレポートによると日本の温室効果ガス排出量は1人当たり年間8トン前後、現行政策での削減による水準は6〜7トン前後で、「1.5℃目標」「2.0℃目標」のいずれの水準にも届かないと指摘されています。そのため、今後はより厳しい目標を設定し、あらゆるテクノロジ―を活用するとともに、国民一人ひとりの意識も変えていく必要があるでしょう。
気温上昇を食い止めるために、私たちができること
日本の温室効果ガス排出量のうち、エネルギー起源二酸化炭素が占める割合が8割を超えています。そのため、さらなる省エネへの取り組みが重要とされており、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーの利用や、電気自動車、ITによる交通・物流・インフラシステムの構築など、国家レベルでの対策が必要となります。そしてそれに加えて、私たち個人レベルでも「省エネ」を心がけて生活することが大切です。
たとえば、ごみ焼却時のCO2排出を減らすために、ごみそのものの量を減らす必要があります。また各家庭でのエネルギー消費量を減らすために暖房や冷房、給湯や冷蔵庫等の温度設定を変える、使っていない電化製品や電気はスイッチをOFFにする等、日々の生活における細かな心がけが大事になってきます。
もしも10年以上前の家電を使い続けているなら、思い切って買い替えた方が省エネ効率が高くなる場合が多いです。最近のテクノロジーにより、今の家電は省エネ性能が大きく進化しています。例えば冷蔵庫なら、10年前の製品と今の製品では消費電力は約39〜46%も省エネに、年間電気代は、約5,300円〜7,160円もおトクになるといわれています。
私たちが少し行動を変えたくらいで温暖化対策には効果がない、と思えるかもしれません。しかし日本のCO₂排出量の実に約6割以上が私たちが生活で消費するモノやサービスをつくる過程で排出されていると言われています。ひとりひとりが意識を変え、少しずつでも行動することで、地球温暖化を食い止めることにつながっていくのです。
読売新聞オンライン「基礎からわかる「COP29(気候変動会議)」